文藝春秋1987年3月号(文藝春秋社 ¥580)
「バンドネオンの豹」レビュー(「レコード・ファッション」欄)...しかし、あがた森魚が新作にタンゴを取り入れたのを、日本のミュージシャンは流行に目ざとい、などと冷笑するとしたら、見当はずれである。あがた森魚はずっと前から独特の感覚で昭和初期のノスタルジアみたいなものを追求してきたシンガー・ソング・ライターで、これまでも彼の作品にタンゴの影は見えかくれしていた。あがただけでなく、加藤和彦なども数年前のアルバムでタンゴを隠し味に使ったことがある。彼らにとってはタンゴは、リバイバルどころかずっと生きていたのだ...