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平岡正明「大落語(上)」(法政大学出版局 ¥2,300(税抜))

「男爵のタンゴ、ジャズ、落語でも「かんしゃく」」より、タンゴを日本に広めた目加田綱美男爵に絡め「バンドネオンの豹」についての記述がある。
...目加田綱美男爵。彼は勝海舟の孫である。彼から日本のタンゴが始まっている。目の治療でパリに行ったそうだ。着くとたちまち目じゃねえとおっ放り出して遊びまくり、折から滞仏中のタンゴの「王様」フランシス・カナロと親交を結んだ。タンゴの踊りをおぼえ、帰国するに際しカナロに十一枚のレコードを貰って、目加田邸の客まで彼がタンゴのレコードを聴かせ踊りを教えたというのがタンゴ来朝記である。一九七八年にアルゼンチンのベテラン歌手が「目加田風に(ア・ロ・メガータ)」という曲を歌って、その曲が日本に入ってきたときにタンゴ歌手阿保郁夫によって紹介された知識だ。
 このエピソードからもう一つ作品が生まれている。あがた森魚の「バンドネオンの豹」というアルバムだ。曲の寄せ集めではなく、テント小屋に入ってアングラ芝居を見ているような作りだ。「男爵のおかえり」という曲からはじまる。俺のイメージだが、テント小屋の舞台真ン中にどこかの外国から送られてきた大きな箱が一つスポットライトをあてて置いてあって、バンドネオンの響きとともに、その箱から目加田男爵が飛びだしてくる。手品のような目加田男爵の帰還である。あがた森魚はアルゼンチン・フランス合作映画「タンゴーガルデルの帰還」を念頭においたのか。超現実主義の技法による回想シーンがあって、「博愛(目賀田博士の異常な愛情)」という曲になる。ここから音が粒立つ。「夢のルナロード」という曲は「淡き光に」を連想させる曲想で、おそらく「ルナ=月」というのは狂気の象徴である。シェーンベルグ唱劇「月に狂ったピエロ」で、無調の曖昧な音列の中に、突然覚醒したかのような旋律があらわれるのと同じだ。あがた森魚にあっても狂気が覚醒であり、正気が混濁せるという逆説を描いたものだ...
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