荷風! vol.8(日本文芸社 2006年6月1日 ¥880)
エッセイ「私にとっての"昭和30年代"それは小樽の港町」「荷風! vol.8」の特集は「"昭和30年代" 東京」。
ある日、佐藤敬子先生に引率された遠足の帰りに、雨に襲われ通りの下の大きな木の蔭に雨宿りした。雨が上がって、再び通りにのぼっていくと、遥か窪地の一角にその城壁が見えた。雨上がりに焼けくすぶる巨大な戦場跡かのようなその一角の方にふと眼差しを投げかけた佐藤敬子先生の、複雑で慈しみ深い表情の綾を、僕はいまここに書き著すことはできない。