鳩よ!1992年7月号(マガジンハウス ¥390)
エッセイ「ヒュアキントス的コメット・タルホ」(特集「稲垣足穂」)ネモ船長のノーチラス号に紛れ込んでしまったネッドの一行達と同じように、タルホ号の潜水艦に紛れ込んでしまうと、迷路裏に分岐された一室一室がまた迷宮めいて、どこから順に覗いたらいいのかわからなくて、お家に帰りたくない子供のようにはしゃいでしまいます。でも、たった今の思いつきで一冊選ぶとするなら、トランプカードのケースに収まった、多留保集の「少年読本」です。その中にボオドレエルの署名から引用した「火箭」という一文があります。そこにタルホは次のようなことを言っています。
つまり、V的優美に対するA的優美がある。その独自なエロティシズムは、そこはかとない自己色情、淡い友人思慕の情として覚えられ、彼等の気取り、おしゃれ等々の元になっている...